人生百年時代!どんどん寿命が伸びている日本人ですが、美容整形の施術を受けると考えると実際のところ、どうなのでしょうか?
どうしても若い時期に受けることが多い整形手術の長期的な変化……、皆さんも気になってしまいますよね。
そこで今回は、横浜TAクリニック院長の石橋医師が未来の不安にお応えします!
目元の整形:二重整形の老後はどうなるのか?
お顔の美容整形術の中で不動の人気を誇る埋没二重術を始め、目周りの施術を受けた場合、長期的にどのような変化をきたすのでしょうか。
埋没法の老後は?解剖学から考える
まず、埋没法で二重を作る方法の一つとして、糸で皮膚と挙筋腱膜(きょきんけんまく)を引っ掛けて、二重ラインの折り込み癖をつけるという方法があります。
この施術では、糸の結び目(糸玉)以外のループ部分は、周囲組織との癒着は起こらないので、長期的に見るとだんだんループ部分の糸によって周囲組織が擦り切れ、引っ掛かりが取れていきます。埋没二重が切開手術と比べて、緩んだり取れたりしやすい原因はこれです。
埋没法の糸が緩んだり取れたりするのは、若い方にも起こりうることですが、長年の経過によって、老後にも起こりやすい現象の一つといえるでしょう。
つまり、埋没法は周囲組織に癒着を起こさないため取れやすいのですが、これは周囲組織にダメージを残しにくいということでもあります。もちろん、全くダメージがないわけではないので、繰り返したり、目を開けるときに重要な眼瞼挙筋(がんけんきょきん)の筋体部にかけたりすると、あまり良くないのですが、切開手術に比べると長期的な影響の少ない手術です。
切開法の老後は?老化に伴う変化について考える
対して切開手術ですが、単純に皮膚を切って二重の折れ込み癖を作るものから、筋肉や靭帯を操作して目の開け方や下まぶたの形や角度を変えるものまで、たくさんの施術方法があります。そのため、一概に長期的な変化としてどうなるかとは言えませんが、年齢を重ねることによって、いくつか確実な変化があります。
一つは、加齢に伴い組織が痩せて減少することです。実は脂肪だけでなく皮膚や筋肉、骨も痩せていきます。原因は水分量やコラーゲンの減少や骨実質の減少などさまざまですが、とりあえず全体的に痩せていきます。手術を受ける場合は、将来的に組織量が減ることを考慮して、施術方法を選ぶ必要があるのです。
もう一つは、加齢で組織が緩んでいくことです。目は起きている間、絶えず動いている部位であり、その動きを支えるたくさんの支持組織で引っ張られています。これらの靭帯や筋肉は、ゴムが伸縮性を失って伸びっぱなしになるように、徐々に緩くなり将来的にたるみとなります。
切開手術は、これらの加齢変化に関係する組織の切除や靭帯の移動などを伴います。術者である医師も患者様もこの点に注意して、適切な施術を選択していくと良いと思います。
鼻整形の老後:異物を入れたケースは?
お鼻の手術と言っても、これまたたくさん種類があるので、一概にどのような長期的変化をたどるとはなかなか言えません。一般的に歳をとると組織が痩せていくことはお話しましたね。
お鼻の場合は、鼻先の形を支えている軟骨が加齢とともに強度を失っていきます。つまり、支えとしての能力が落ち、鼻先が潰れたり垂れ下がったりしたように見えます。昔話や絵本で、魔女や老婆の鼻を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
また、お鼻の施術で一般的な鼻筋のプロテーゼは、異物であり自分の組織とは異なるため、プロテーゼを覆う皮膚が薄くなると、プロテーゼの輪郭が透けて見えることがあります。プロテーゼが浅い皮下に入っていたり、大きすぎたりするものや、鼻先までのL型プロテーゼである場合、こうしたリスクが高まります。
これからプロテーゼの施術を受けようか、考えている方はよーく考えて、良い治療を選んでくださいね。
豊胸手術の老後
豊胸手術の場合、使用した材料によって長期経過が大きく異なります。
ヒアルロン酸は「吸収されるから長期的には無くなるし安心」、と考えられてきました。しかし、完全には吸収されず周りに膜を作って残ることがあり、ひきつれて固くなることもありますので、気軽に受けると後悔することもあります。
もう一つの方法としてシリコンバッグによる豊胸があります。形成外科領域では乳がん術後の乳房再建術でも広く使用されている安全性の高い方法です。しかし、時間とともに形が変わらないことが問題となることがあります。若いときにバッグ豊胸を受け、歳をとっても胸だけ若いときのままで、不自然になり取り出すこともあるのです。特にサイズが大きい場合、違和感が強くなる傾向があります。
加齢による不具合が少ないのは脂肪注入ですが、ダウンタイムが長かったり、そもそも入れる脂肪がない痩せ型の方は、手術ができなかったりすることもあるので悩みどころですね。
老後のために!美容整形で気をつけたい3つのこと
① 異物を入れているところに不具合が起こっていないか観察しましょう。
多くの場合、大丈夫ですが、施術から年単位で時間が経っても、感染したりひきつれたりしてくることがあります。念のため、定期的に確認しましょう。
② 施術を受けた医師やクリニックの術後診察は、必ず指定された時期に行きましょう。
抜糸や処置はもちろんですが、術後の変化を一緒に見ることで、合併症の治療や修正が必要な場合に、迅速に対応することが可能です。
③ 最新の目新しい治療は受ける前によく吟味しましょう。
美容整形に限らず、医療はどんどん進歩しています。ただ、新しい治療法が全て良いというわけではなく、数年経つと無くなってしまう、そんな治療もあるのが現状です。中には後遺症が残ったり、かなり危険なものもあったりするので、リスクがあるものだと理解して受けましょう。当クリニックでも新しい治療・新施術を導入する際は、十分な検証を重ねたうえで行っておりますが、疑問や不安などがある場合は、必ず事前に担当医師に相談してください。
メリットとリスクをしっかり把握してから施術を受けましょう
結局、どの施術も受けてからずっといい状態が保たれるというものはありません。
考えてみてください。周りに10年間顔や身体が変わってない人が居ますか?たとえ他人には変わらないねと言われても、自分の変化は自分自身が一番感じているものです。
美容整形も同じで、持続期間の長いもの短いものの差はあれ、状態は変化していきます。だって時間とともに、施術を受けた身体自体が変化しているんですからね。
それ自体は何ら異常ではなく正常なことです。重要なことは施術を受けることで、今後起こり得る変化を理解し、術後に適切な管理を行い、起きた問題に対応をしていくことができるかです。美容目的で施術を受けるメリットと比較して、それらのリスクを受け入れられるのか、よく考えて施術に望みましょう。
知恵袋では教えてくれない疑問を解消します
ご自分の身体に手を加える整形手術、考えるだけで不安になるのは当たり前のことですし、それが正しい感覚だと思います。むしろいいところばかり強調した広告にのせられて気軽に美容整形を受け、その後長い間後悔してしまうより、よっぽどいいのではないでしょうか。
ただ、美容整形のデメリットを正しく説明してくれる医師やクリニックのお話を聞き、きちんと理解したうえで本当に必要だと思えるなら、美容整形を受けることは悪いことだとは思いません。
不安なことがあれば遠慮せず、医師やクリニックのスタッフにご相談ください。しっかり悩みや不安を聞いてくれるかということは、クリニック選びの重要なポイントでもあります。
僕の携わった患者様だけでなく、美容整形手術を受けた患者様全員が、長い目で見て後悔の少ない人生を送ることを願っています。